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メディアに掲載された姫野カオルコ作品の書評を紹介(終業式/角川文庫)

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『終業式』角川文庫

なまもの!(評者=大矢博子

すべてが書簡で構成された物語。女子高校生二人の交換ノートから話は始まる。
どこにでもあるような、女の子どうしの交換ノート。友だちのうわさ話、教師の悪口、気になってる男の子の話、嫌いなクラスメートの悪口。
その合間合間に挿入される、他の人物の手紙やメモ。ラブレターや、出せない手紙。

そして彼女たちは高校を卒業し、大学へ進み、就職して、それぞれの場所で新たな出逢いを経験する。
それも全て、手紙やメモ、ファクスだけで構成されているのだ。
すべての(それもけっこうな数の)登場人物は、常にその人が書いた手紙で表現される。

高校時代から三十代までの二十年の年月を、手紙だけで綴った叙情詩である。
高校時代は、恥ずかしくも懐かしい。淡い恋心、カッコつけたラブレター。友だちにも言えない気持ちを、ラジオのDJに書き送る。バレンタインに忍ばせた手紙。

そんな恋や友情がどうなるかも、すべて手紙が物語ってくれる。
告白したのか、うまくいったのか、手紙に書かれていない事実は知りようがない。
読者に説明するための手紙ではなく、本当に相手に分かればいいだけの手紙だから、読者にはわからない「あのこと」「あのとき」などという言葉が頻出する。

しかし、少し後の手紙に、初めてのKISSが──などと書かれていて、読者は初めて「あ、この二人付き合い出したんだ!」と知るのである。
大学時代。就職。さまざまな出逢いと別れを繰り返し、個々に事件も経て、登場人物達はそれぞれの伴侶を見つける。そして……。

なんていうんだろうなあ、切ない、のだ。滲みる、のだ。登場人物たちが自分と同世代だというせいも勿論あるだろう。でもそれ以上に、ただ、4〜5人のメインの人物が書いた色々な手紙やファックスを並べるだけで、これだけの物語になってしまうという事実に圧倒される。

手紙の向こうに見える彼らの恋愛や出逢いや別れが、はっきりと書かれていないにも関わらず、手に取るように見えるのだ。説明的でない、本当に「私信」を並べた だけの物語。
それでも、それが個々の人物をはっきりと浮彫にし、読者を掴む。

これは、すごい作品だ。そして、心に滲みる、恥ずかしさや懐かしさや嬉しさなどがないまぜになった、切なくも暖かい傑作だ。そして最高のハッピーエンドが待 っている。読後感は最高! 三十代の女性、これは読まねばいけませんよ。

(01.12.28)
 
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