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『ハルカ・エイティ』発売記念Q&A

えー、誠に勝手ながら管理人が読者を代表して『ハルカ・エイティ』についての質問をさせていただきました。(10月15日の発売時)
質問@

今回は「ちがうもん」などよりも地名に具体的な記述が多く、物語の場所がわかりやすい感じです。ただ、一部、鶇や風吹や宜間など独特のネーミングで架空の町がでています。ここらへんは何か特別の理由があるのでしょうか?

(A)
理由としてはふたつあります。
ひとつは、事実をもとにした小説である以上、登場人物のモデルに想定した御本人や御家族の方のプライバシーに配慮したため。

もうひとつは、読者が公平に土地勘を持てるようにしたかったから。
ハルカは滋賀で生まれて大阪にお嫁にいった女性です。このへんは具体的に実在の地名を用いたほうが、読む人も、方角というか地域がつかめる。
でも、その地域の、さらにどこかまでを実在の地名にすると、関西在住の人にはよくわかっても、それ以外の地区在住の人にはピンと来ない。
架空の地名にすれば、架空ということで、読者いっせいに公平になりますから……。

ネーミングには、ちょっとした隠れ遊びをしました。
私は翻訳家の鴻巣友季子さんの日本語の美しさに敬服しています。鴻巣さんは最近『嵐が丘』を新たに訳し直されました。この名作は、長いこと、
〃主人公キャシーの家が「嵐が丘」にあり、ちょっと離れた「スラッシュクロス・グレインジ」にエドガーの家があった……〃
みたいに訳されていましたが、鴻巣さんはキャシーの家が「嵐が丘」なのに、もう一方がカタカナのままなのはヘンではないかと「鶇の辻(つぐみのつじ)」と名訳されたのです。

そこで鴻巣さんに、〃キャシーの家とエドガーの家の距離に位置する二つの町として、拙著で使わせてください〃とお願いして、快諾していただいたのです。

嵐丘市というのはちょっとへんなので「風吹市」にして、ここがアーンショー家のような鬱蒼とした石の館がある暗めの町とし、風吹からちょっと離れた、風吹よりはにぎやかな都会的な町を「鶇市」としました。

アーンショー氏(キャシーのお父さん)もヒースクリフも、商売をしに、ギマトンなる都会に行っている。で、ハルカが嫁いだ先は大阪のギマトンにしようと。それでギマトンから「宜間(ぎま)」と。

『嵐が丘』には実在のイギリスの町が出てくるところもあります。リバプール。それでハルカが後年住む府下の市名はリバプールから「李土生(りはぶ)」と。

鴻巣さんは文章が美しいだけでなく外見もきれいで上品な方でして、〃きっとエミリー・ブロンテも喜んででくれることでしょう〃と、おやさしく言ってくださったのですが、エミリー・ブロンテは鴻巣さんの訳は喜んでも私の小説は喜んでくれるかなあ……。でもまあ、もう157年も前にお亡くなりになられ たので、怒って電話してくることはないでしょう(笑)



質問A

実在の人物の実際の出来事を元にした物語ということですが、かと言ってノンフィクションではないとのこと。
と言うことは、事実と作者の虚構が入り混じっていることになります。このあたりの案配はどうなっているのでしょうか?

(A)
〃ここは本当でここは作り話だとつぶさに指摘できるほどの案配〃。
こう答えれば、小説を書く職業の人にはわかると思います。
そもそも小説というのは、こうしたことが書き手もわからないくらい、いろんなところからヒントを得てコラージュして、継ぎ目もぼやぼやになっています。だから、誰かひとりの人間なり、何かの出来事なりをモデルにするということはない、というか、できないんですよ。
(最初からモデルを設定せんとする目的を持って書かれたものは除く)

でも、それが今回は、つぶさに指摘できるのだから、こういう意味で、今回の作品は例外的なので、「ノンフィクションではないが、実話をもとにした小説」と言いました。ただし、つぶさにお答えするのは、先のプライバシー問題もありますし、また、スペースの問題もありますので割愛しましょう。

少しだけ?
そうですね。戦争中のことや、戦場での出来事はすべて実話です。私が直接、会って話を聞かせてもらったことなどを主に参考にしました。ただ、そうしたできごとが小説内での登場人物の体験ではない場合もありますから、そこは架空ということになりますか。
ヘルメットの中を弾丸が旋回した体験談も、ほんとうにそれを体験した人の口から私が聞いたものです。



質問B

今回の装丁は下地が透けて表紙の地になるというなかなか面白い作りになっています。何気なくとまっている蝶も良いアクセントになっていますし・・・。
装丁に関して何か特別に意図したものがあるのでしょうか?

(A)
装丁は文藝春秋デザイン室の関口信介さんという29歳の男性が担当して下さいました。イラストレーターの選定ももちろん彼です。イラストには村林タカノブさんを起用されました。
装丁作業については、著者である私はほとんどノータッチでした。やはりモチはモチ屋におまかせしたほうが商品としていい結果になるだろうと。私はせいぜい「粒餡がいい」とか「白餡にして」ていどの大まかなリクエストだけしました。

「主人公は明るい人なので、それが伝わるようなデザインで。セーラー服をアイテムとして使ってほしい。他の細かなことはおまかせします」と。



質問C

主人公のハルカさんはもちろん、彼女のまわりに居る人物がたいへん印象的で面白いのですが……、例えば華族の日向子さん……、星野さん……、緑川博士……、中には、どう考えても戦後日本の高度成長をある面代表する大物政治家がいますね。あれはあの赤プリのあの人ですか?

(A)
まず日向子さん。
ハルカさんの仲良し同級生に、男爵令嬢というお嬢様がいらしたのは事実です。ハルカさんとは別人の知人の高齢知人にも、同級生に子爵令嬢がいました。お二人から、いろいろとお話を伺いました。それらを資料として……。 実在の方ですので詳細はプライバシーの問題で秘密とさせていただき、さらにバリアー的に、日向子さんのしゃべり方をフィクションならではのデフォルメにしました。

ちょっと小説のラストのほうをバラしちゃいますが、あのびっくり仰天の再婚劇は、嘘みたいですが実話です。このびっくり劇がすっかり落ち着いた後年に顛末を聞きました。聞いた時の私は19歳年下の男性と交際をしており、けっこう自分で自分に驚いていたのですが、「19歳年下なんて、そんなんは〃あ たりまえ〃や」とハルカさんに軽く流されてしまう始末でした。日向子さんは25歳年下の男性と交際されて再婚されましたんで……。秋吉久美子の先をイッてますね。
ちなみに、結婚15年を経た現在も、円満夫婦だそうです。「カレのお母さんとワタシのほうが、ワタシとカレより年齢差が少ないねん」だそうで、その方はお姑さんとも仲よく、ショッピングや観劇を楽しんでおられるそうです。相手の男性は中東のサマーワに駐屯中(「ハルカ・エイティ」を書いてるとき)でした。この夫婦でもう一作書けそうなくらい、私もびっくりしました。

でも、ハルカさんも82歳でナンパされてたわけですし(作中のタクシーの運転手からの告白も事実なんですが、事実ほど「そんなアホな」と映ると思います)、人生、年をとっても、たのしくやろうと思えばいくらでもたのしくできる見本みたいな人でした。

それからピストルさん。
ピストルといえばピストルさんですからね。
お若い世代の方で、この綽名が何のことかわからない方は、検索なさってください。チョー有名な方です。
愛国婦人会の用事で上京したさいに食事をごちそうしてもらった話も、ほんとに私が聞いたことです。ただし、詳細については「これはフィクションであり人名その他すべて架空のものです」と答えておきましょう。

十年ほど前、私はピストルさんの息子さんを、遠くから見たことがあります。某出版社のさる集まりで。息子さんを見たからってそれがどうしたと思われるかもしれませんが、私は彼が昔からすごく気になるのです。屈折せざるをえない環境に生まれた者としての運命を思うと…。すみません。話がそれてしまい ましたね。

緑川博士。
ハルカさんから聞いた話のうちで、私としてはこの人の娘さんと同級だったというのが一番インパクトが あったのです。 なんといっても愛読(?)していた山川の日本史の教科書に出てくる人ですから。 ですが……、うむむむ、これはほんとにプライバシーがありますので、このへんでやめときます。

星野さん。
これは実名で出しました。出しても問題ないエピソードだったので、ここでもふれていいでしょう。
そうなんですよ。ハルカさん、星野仙一のお姉さんとゆかりが……。

野球といえば、推敲のさいに削った部分がありまして。 時子の結婚相手、宮迫哲爾は、軍隊時代、オヅさんと同じ部隊でした。オヅさんといえば、元阪神タイガースのオーナー。 それで、タイガースの選手のサインはもらいほうだいでしたが、秋子は、少女時代に野球にまるで関心がなく、無頓着にどんどん人にあげてしまってました。とっといて売ればよかった(T_T) 遅ればせながら、今季、タイガース、優勝おめでとうございます……ってまた話が逸れましたね。ごめんなさい。



質問D

作中でてくるハルカさんの親戚になったプロレスラーは、以前姫野さんが角川文庫『ほんとに〃いい〃と思ってる?』で書いていたのと同一人物ですか?

(A)
うーむ、これまた、御家族の方がいまも御存命で、おしあわせにお暮らしですからあまり詳しいことは……。
あのレスラーはあくまでシャークですので。ブラッシーじゃなくて(笑)
時子の娘、秋子は、成人して女子プロレスラーの神取忍さんと対談する光栄にあずかりました。プロレスと野球選手にはミョーにエンのあるハルカと時子と秋子です……。



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