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『昭和の犬』(幻冬舎)
2014年 第150回直木賞受賞作

この小説は姫野さん自身がブログに書いているように「冷たい小説」です。
反対の「熱い小説」というのは、例えば
------読者が誰か(主人公が多い)に感情移入しながらハラハラドキドキとストーリーを追い、そこに起ち現れる様々な事件や困難を乗り越えて行く主人公に自分を重ねて読後はスッキリ気持ちも前向きにファイト一発------
というものが多いでしょう。つまりエンターテイメントやゲームの要素があるものは基本的に「熱い小説」になります。

姫野さんご本人も別にこの「熱い小説」を否定するつもりはないと言っています。しかし、現実の生活ではそういう「熱さ」とは無縁の日常を淡々と過ごしている人たちも多いのではないでしょうか。もし、そういう人々が「自分の人生は何も劇的なことはないし、熱い感動もなく、ドラマなんかで見る成功や幸せというものは・・・私には無縁だ」などと思ったことがあるなら、ぜひこの「昭和の犬」をおすすめします。

地味で平凡で静かな日常の中でも、小さなことに耳を澄ませ、物事を一歩引いて眺め、心を落ち着かせて捜してみると、身近なところ、すぐそこに「あなただけの幸せ」を発見することができます。そんなことに気づかせられるのが第150回直木賞を受賞した「昭和の犬」です。

選考委員の浅田次郎氏は選評で、
「姫野さんは今回が5回目の候補ですが、ふつう直木賞の候補は、ほぼ連続して挙がってくる。ところが姫野さんの場合は、長い時間にわたり、数年おきにとびとび、オリンピック状態で候補になった。たいへん個性が強く、そのたびに賛否両論が分かれる作家です。ただ私見では今回、その個性を失わないまま、迎合しない状態で、すばらしいまとまりを示した。直接的に、最も重要なのはオリジナリティーだったと思います。これだけ出版点数が増え、同じような小説が受け入れられやすい市場の中で、姫野さんはデビュー以来、ご自分の世界というものを真っすぐ書いていた孤高の作家です。今回は、姫野さんに直木賞がねじふせられた感じの受賞ではないか。正直、頭が下がりました。今日、小説がまま影響されやすいコミックやゲーム、映像といったものとは全く別次元にある、小説の世界に根を張った小説であると感じました。最も受賞を決定づけた理由は、オリジナリティーです」
と、述べています。

確かに過去のノミネートでは常に賛否がはっきりと別れていたようで「天才」「異才」「疑いもなく大変な才能の持ち主」など(いずれも前回「リアル・シンデレラ」に対する選評)と高い評価をした選考委員もいたのに、結果は落選。これが意味するのは、選考委員においていかに評価の落差が大きかったかということです。

コアなファンの間では、姫野作品に流れる独特の流儀というか哲学を「ヒメノ式」と呼んでいますが、こうした個性の強さは常に物議を醸すものとして許容されています。つまりファンも様々ですから中には「ここはちょっとついていけない」「これは自分には???」という感じで違和感も生まれたりするのですが、それも含めての「ヒメノ式」として受け入れ理解しようとするようになるのです。つまり姫野読者となったからには、いやでも「大人の本読み」に成長させられるのです。

そういう「大人の本読み」には新たな楽しみが生まれます。例えば「昭和の犬」にはもちろん犬(猫も)が出てきます。受賞会見で姫野さんは記者から「好きな犬種は?」との質問にボソっと「雑種」と答えていましたが、実はあの時管理人は姫野さんが「嫌いな犬種はチワワ」などと余計なことを言い出さないかとドキドキしてしまいました。

そのこと自体は秘密でも何でもなくて以前に書いたりラジオでも言ったりしていて、管理人はその度に「ああ、また姫野さん言わなくても良いことを・・・世の中のチワワ好きを敵に回すなんて」と心配したりするのですが、そこは筋金入りの「ヒメノ式」ですから嫌いなものは嫌いと直球勝負です。

ついでに例をあげると姫野さんは自分をパパママと呼ばせる親にも違和感があるそうです。姫野さんは昭和33年生まれで管理人もちょっと上ですが同世代。私の覚えている限りでは友人知人で親をパパママと呼んでいた者は皆無です。その時代の私たちにとってパパやママとは「昭和の犬」の章題になっているようなアメリカドラマの中だけの呼び方で、とてもじゃないけど親をパパママなどと呼ぶなんてできませんでした。
しかし現在その世代は子からパパママと呼ばれることが多いですね。まったくジャガイモみたいな顔してな〜にがパパだ・・・あっ、これは姫野さんじゃなくて管理人の意見。年代的にはもう「おじいさん・おばあさん」かもしれませんがさすがに「グランパ・グランマ」という呼び方はまだ定着していません。

こうした誰もが特に気にしないようなことに姫野さんが違和感有りと書いているのがきっかけになって私は昭和という時代の変遷に改めてあれこれ思いをめぐらせるようになりました。これも「ヒメノ式」の楽しみ方のひとつなんです。

今回の直木賞受賞で読者数は飛躍的に増えることと思われますので、初めて姫野カオルコ作品を読んで「ヒメノ式」体験をした方にちょっとアドバイス。
元々ベストセラー作家というわけではありませんから誰もが好きで心地よく口当たりの良い作品ばかりではないかもしれません。しかし読み終えて最終ページをパタンと閉じた瞬間から否応なしに自分自身との対話が始まるという稀有な「読後の読書体験」とも言うべき時間を楽しんでください。

それこそ小説というものの持つ力であり読書の醍醐味なのですから。


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