この作品は単行本が講談社からでたのが1990年。同文庫が93年。そして、2001年8月に集英社から新たに文庫で発売された。真っ赤な表紙に、
「時代がミツコに追いついた。姫野カオルコの早すぎたデビュー作が21世紀の倫理を確立すべく、装いも新たにバージョン・アップ大復活」
というブルーの帯が新鮮でした。

人類は様々な社会制度を経て、現在、我々が享受している民主主義というものが最も優れた制度である、あるはず、そうでなければならない。と、思わされています。簡単に言えば、民主主義とは何事も話し合いで決定し、争いごとはやめましょうね、選挙をしましょうね、多数決できめましょうね。という制度です。これじゃ簡単すぎか。しかーし！これはファシズムと紙一重なんですよぉ。

多数派に属する人々でなく、なぜかいつも少数派に属してしまうような人々の視点に立つとわかりやすいですね。自分なりの納得する考えがあるのに、いつもそれを曲げなければならない。正しいのは多数派の方で、自分は間違っているらしい。だから生きにくくてしょうがないんだけど、妥協しておとなしくしている。理想的な民主主義では、少数派の意見を尊重することになっていますが、これはあくまで論理的にそうなっているだけのことで、実際は多数派が正義とされます。まして、自分が多数派であることに自覚的でない人は簡単に少数派を抑圧します。

なんだか風呂敷きを広げすぎてまとまりませんが、それぞれ人は自分の中に多数派的部分と少数派的部分を併せ持っています。そのことに（特に自分の中の多数派的な部分）に自覚的で、その視点から少数派を排除せず尊重する寛容の気持ちを忘れないのであれば、本書の主人公「ミツコ」の怒りをかうこともないでしょう。怒りをかうとどうなるかって？ ジェイソンとフレディーとブギーマンとターミネーターがレーザーラモンといっしょに腰を振っていたら、一人だけやたらリズムの良いゾンビがいて、よく見たらマイケル・ジャクソンだったというくらい怖いかも。フォー。いかんいかんちゃんと本の紹介をしなければ。

姫野さんの読者はある意味少数派ですから、そこから世の中を見た場合に自分たちが正しく間違っているのは世の中の方だと思いがちです。私、管理人もよくそう思います。その時に今一度自分の中の多数派的感覚や少数派的感覚を見つめて、世の中だけでなく自分自身をも疑ってみる冷静さが必要だと思います。しかしたまにはサイキックミツコによるお仕置き（？）も気分がすっきりして良いものです。ちなみにファンサイトのワーストキャラ投票No１は、本書の登場人物である佐々木課長。ベスト10にはもう一人原武くんも入って大健闘しています。

さて、話はかわって私、管理人が自分の中にある多数派の部分を捜してみると・・・。うーむ、次節がらＷ杯サッカーにワクワクしているのは現在では多数派でしょうな。でも、私は「巨人・大鵬・卵焼き」の時代に「ヤンマー（あの釜本選手がいた実業団チーム）・柏戸・干し納豆」だったし・・・、あぁ。この例えが昭和30年代だなあ。えっと、そうそう多数派ね・・・。・・・グゥ。って寝るな。携帯電話はいまだにＪフォンだし。ＯＳはいまだにWIN95だし。あっ、これは別に多数派少数派の問題ではなくて、単にモノ持ちが良すぎてその結果少数派になってしまったということか。