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『サイケ』(集英社文庫2003年6月)

現在愛知万博が行なわれていますが、こちらで出てくる万博は1970年の大阪万博。万博の展示内容ではなくて、時代の空気を見事に表わす背景として使われています。1970年がどういう年であったのかは、こちらのサイトに詳しいが、時間がある方はついでに前後2〜3年ぐらいをチェックしてみてください。当時のさまざまな出来事や世相風俗から浮かび上がってくるのは、敗戦によって一度リセットされた日本が、四半世紀の後に迎えた歴史の転回点、それが1970年であり、万博会場にそびえ立つ異形のオブジェ(太陽の塔)はまさにその象徴であったということ。

滋賀県出身の姫野さんにとって、大阪万博は日本全国が沸き立った身近なイベントであり、12才の豊かで鋭い感性はじっかりと時代の空気を記憶に刻み付けたようですね。実は私も見に行きました。が、茨城の田舎から大阪に出るのは、それだけで何だか大仕事でしかもそれまでの15年の人生で最も多くの人を一度に見て、ひたすら疲れた記憶しか残っていません。そして延々待ってやっと見た月の石が、なんだかニセモノに思えて・・・。

よく子供やペットが出てくる話は、受け入られやすいと言います。基本的に、子供やペットが純真無垢な存在として共感を得る構造になっていますね。しかし本作品はこうした前提(子供やペットは純真無垢)自体を揺さぶる独特の視点を持っています。子供やペットは適切な表現を持たないがゆえに、勝手に誤解される存在なのかも知れません。子供は我々が思っている以上に物事の本質を見抜いているのですが、それを説明する言葉を持たない。大人は物事を説明できるがゆえに、言葉に溺れて見えない、あるいは見ようとしないことがあるのです。姫野作品に出てくる子供には、矛盾の塊でしかも不思議な存在感が宿っています。

単行本未収録だった作品「ちび」が「通りゃんせ」の替わりに入っています。ちなみに「通りゃんせ」は6月発売の『よるねこ』集英社文庫に改稿して収録されました。話題沸騰の著者胴体写真は発売一ヶ月前ぐらいに撮ったものだそうです。だいたい人はこのくらいの年齢になると、棒っきれなどを振り回して「ナイスバーディー」などと言いつつ体型が崩れてゆくものですが、姫野さんのはもうね、ズバリ「ナイスバディー」です。 最近の集英社文庫では、著者写真をパーツ?で出すという大胆な実験になっていますが、胴体・○ときたら次はぜひ「足」をお願いしたいものです。さらにその次は・・・ウフフ。


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