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『受難』(文春文庫2002年3月)

今回は管理人も個人的に大好きな『受難』。
それにしても「あそこに人面瘡」ってコピーもすごいですねえ。

自宅でコンピューターのプログラミングをしながら、物欲に囚われず質素に一人静かに暮らす女性。その名もフランチェス子。

ただただ当たり前の倫理観を持っているがゆえに、無意識下ですら男に媚びることができない。ゆえに??三十歳を過ぎても男と付き合うこともなく、処女である。なぜなら一般に雄としての男が求めるのは、無自覚の性であり、自然な雌としてのフェロモンを撒き散らす女性だから。

ところで、物語はいきなりフランチェス子と古賀さんという人物の異常な会話から始まる。古賀さんとはフランチェス子の体にできた「しゃべる人面瘡」。しかも、知性豊かではあるがひねくれて意地悪な性格を持ち、フランチェス子の生活行動にいちいち皮肉な文句をつけると言うシロモノ。性別は男。基本的に受難は二人、フランチェス子と古賀さん、の会話で成り立っていると言っても良いのですが、この異常な状況の密室的ダイアローグは、文学史上に残る空前絶後の面白さなんです。卑語俗語擬態語を駆使してフランチェス子を罵倒する古賀さんと、素直にそれを受け入れるフランチェス子。言葉の家庭内暴力とさえ思える古賀さんの非情な仕打ち(言いぐさ)なのですが、悲惨な情景にはならなくて、どちらかと言うと笑ってしまうんですね。なにせ、古賀さんの生息している場所が場所だし・・・。場所って? そりゃ、あそこですよ。あ・そ・こ。

ところで、 私はあまりの面白さにグイグイ引き込まれて読みつつも、物語の落とし所というか結論がこのままではまとめようがないんじゃないかなあと心配してしまったのです。しかーし、フッフッフ。フが三っつ。私ごとき素人には考えもつかぬ驚愕の大団円が用意されておりました。すれっからしの私も思わず涙してしまいましたよ。無茶な設定に無茶なエンディング?のポップで俗な言葉満載の物語なのに、読後は崇高な聖性を感じ深く静かな感動とカタルシスがあるという希有な作品。

キリスト教的なモチーフに現代日本の病理をコミカルに融合させて、さらに物語の王道でもある貴種流離譚の香りもする大人のファンタジー。そしてこれは世界文学史上始めて書かれた「聖人と人面瘡の愛の物語」でもあるのです。本作は1997年第117回直木賞にノミネートされた。

2005年9月現在、受難の映画化が進行中です。映画の素材としてはなかなか難しそうですが、映像化自体はCGとかを使えば不可能はありませんものね。フランチェス子と古賀さん、この二人を演じる俳優が誰になるか興味深いものがあります。


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