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『リアル・シンデレラ』
(2012年6月光文社文庫より発売)

単行本を読んでからずっと「リアル・シンデレラ」は(祈りの書)として常に私の心のなかに在り続けています。まあ(祈りの書)と言っても具体的に何かを祈り何かの言葉を唱えたりするわけじゃありません。日常のふとした瞬間に「リアル・シンデレラ」の倉島泉ちゃんのことを思うときがあるのです。
だいたいそういう時は、気持ちが疲れていたりちょっとこまったことが続いたあとでフーッっとため息をついたりしている時が多いようですね。

そんな時に
「泉ちゃん、どこでどうしているのかなあ・・・」
などと梅雨空を見上げたりすると、「リアル・シンデレラ」の様々なシーンが頭に浮かび、そして不思議なことにスゥーっと静かに潮が引くように自分の中に積もった澱のようなものが消えて行くのです。

決して気分が高揚するわけではなく、どちらかと言えばもの悲しい感覚なのですがそれでも何かが浄化されて、また日常にしっかりと足を踏み出そうという気になります。
これは世に安易に喧伝されているイケイケのポジティブ思考とはまったく別もので、私的には仏教的な諸行無常の感覚に近いかもしれません。だって、なんでも前向きに明るく楽しくポジティブにって・・・疲れませんか?

ネット上の「リアル・シンデレラ」評を読むと、良い評価をした人に共通しているのは難病も大恋愛も失恋も天災も事件もないのに最後にギュッと胸をわしづかみにされて涙してしまうことにたいする驚きがあります。
そしてほとんど全員が読後には「幸せって何?」という自問をくりかえすことになります。これはこの小説が持つ地力であり姫野さんの筆力によるものです
「あー、おもしろかった」と読み終えてパタンと本を閉じたら、すぐ次のことに取り掛かれるのが普通のエンタティメント小説ですが、「リアル・シンデレラ」はパタンと本を閉じた瞬間から反芻と自問の時間が始まります。反省と自慰ではありません・・・。

え〜っと、管理人でなくてジキル古賀のほうの人格がでてきてしょもないことを書いてしまいました。単行本発売の1年後に起こった東日本大震災や未だに収束していない福島原発の事故は、人々の「幸せ」に対する考えを大きく変えたと言っても良いのですが、「リアル・シンデレラ」の問題提起(ここは敢えて問題提起と言いましょう)はまったく色あせることなく今、この日本の日常を生きている人々に問いかけます。

亡くなられた児玉清さんが、世の中にはお仕着せの「幸せ」の定型に自分を当てはめようとするあまりにかえって不幸になっている人がたくさんいる、とおっしゃっていました。幸せは他人と比べるものではないし、まして人から与えられるものではないのです。そして希代の読書家であった児玉さんが「本を読んでこんなに泣いたことはない」と。

本書の主人公「泉ちゃん」は、読者にスポットライトに煌々と照らされる舞台の虚飾(主役)ではなくキャンドルの淡い明かりに揺らめく泡沫(脇役)の輝きを見せてくれます。そして、私達は自問することになるでしょう。

「自分は幸せだろうか?自分のまわりの人は幸せだろうか?」


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